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250年の歴史を持つ酒蔵で働くプロに聞いた!日本酒の試飲の楽しみ方

日本酒の世界は驚くほど多様です。そんな世界に足を踏み入れるのには少し気が引けるかもしれません。日本酒は地域性から精米歩合に至るまで、その他さまざまな要素が織り重なり、味が決まります。日本酒初心者の方が日本酒をもっと知る方法の1つが、日本全国にある酒蔵の多くが用意している、日本酒の試飲コースでしょう。しかし、何も知らずに参加すると、がっかりすることもあるかもしれないので、前もって勉強しておくのが大切です。この記事を書くにあたり、私たちは250年の歴史を持つ今代司酒造株式会社を訪ね、営業マネージャーの渡辺 佳さんご指導のもと、日本酒をおいしく味わえる試飲方法について話を伺ってきました。渡辺さん直伝の誰でも簡単にできるシンプルな方法を実践すれば、古くから伝わる至極の飲み物の深みが明らかになり始めることでしょう。

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そもそも日本酒とはどんなもの?

日本酒の原料は、蒸したお米に麹、水、酵母(多くは醸造アルコールも含む)と、シンプルです。精米したお米を蒸したら「麹菌」(コメコウジ菌)を振りかけて米麹にし、他の蒸米と水、酵母とで混ぜ、「酒母」または「酛(もと)」という名の日本酒のもととなるものを作ります。

酵母が増殖したら、この「酒母」を大きなタンクへ移動させ、蒸した米・米麹・水と合わせて、「醪(もろみ)」を作ります。原料の添加は3回行い、徐々に発酵を促します。およそ1ヶ月後、圧搾、濾過、火入れ、熟成、調合をした後、瓶詰めをして、最終製品である「日本酒」が出来上がります。お察しの通り、醸造の工程はとても複雑で、それぞれの工程はさらに変化をつけたり、省略したりすることで、まったく新しいものや、他とは違うものを生み出すこともできます。これこそが醸造者が驚くほど多様な種類の日本酒を作り出せる所以なのです。

日本酒の中心地、新潟市の今代司酒造株式会社へ

新潟駅から歩いて20分ほどの場所にある今代司酒造は、新潟市の中心にあります。新潟県は日本酒の中心地として最も有名な場所の1つとされており、日本国内で最も酒蔵の多い県です。また、米の生産高も国内一を誇ります。今代司酒造は酒の卸し業者として1767年に創業を開始したのち、明治時代(1868〜1912年)の中頃に醸造業へと舵をとりました。創業から250年以上にわたる歴史を築いています。

今代司酒造は、すばらしく革新的な醸造所で、代々受け継がれてきた由緒ある醸造技術と現代のデザインを掛け合わせるという形で、伝統とイノベーションとのバランスをとろうと努めています。日本酒の製造工程で醸造アルコールを加えず、米と米麹だけで醸造する「純米」という方法に厳格にこだわり、米そのものの風味を引き立てています。

今代司酒造の自慢は、その幅広い商品を試すことができる日本酒の試飲コースがあることです。このような日本酒試飲コースの多くはプロのソムリエにより主催されていますが、カップを渡され、ご自由にどうぞという形のセルフサービスのコースが一般的です。今代司酒造でもそのような形式をとっており、私たちが訪ねた日は10種類以上の日本酒を惜しみなく取り揃えてくださり、私たちはとても嬉しく、感動しました。

渡辺佳さんに聞く日本酒の試飲コースの楽しみ方

以上のことを念頭に置いて、今代司酒造で営業マネージャーをされている渡辺佳さんと席を共にし、セルフサービス型の試飲コースのおすすめの楽しみ方についてお伺いしました。渡辺さんは情熱的な日本酒愛好家で、今代司酒造では5年以上のキャリアを持ち、より幅広いお客様に向けた、新しく、とっつきやすい日本酒のプロモーション方法を発見するべく日々励んでおられます。渡辺さんは、ご自身の経験と学びから、正しく紹介すればすべての人に日本酒を楽しんでもらえると強く信じています。

日本酒を飲む前に理解しておくこと

日本酒には、味、品質、アルコール度数、などはっきりと表示されている項目があるので、飲む前にそれぞれの日本酒についての基本的なことを理解することができます。日本酒について理解するためには、まず以下について学ぶのがいいと渡辺さんはおっしゃいます。

  • 精米歩合
  • 醸造所独自の、または季節限定の醸造酒
  • 日本酒度(Sake Meter Value; SMV)
  • アルコール度数(Alcohol by Volume; ABV)

これから、これら1つ1つについて詳しく説明していきますので、今この言葉を聞いてピンとこなくても問題ありません。

大吟醸と吟醸:精米歩合から最高級の日本酒を見つける

日本酒の試飲コースを有意義に体験するために、値段においても、品質においても高いものから試すことを渡辺さんはおすすめしています。というのも、これはシンプルなロジックで、酔いがまわってくると味覚が鈍くなり、細かい複雑な味が分からなくなるからです。さらに、「辛口」(甘くない日本酒)を最初に選ぶほうがいいそうです。甘口の酒は重厚で芳醇な味わいのことが多く、微細な味を隠してしまうからだそうです。

私たちの試飲コースの最初に、渡辺さんは試飲室の裏側へと案内してくださり、今代司の最高級の日本酒を出してくれました。「純米大吟醸 今代司 極上」です。試飲室に入ると、渡辺さんは、極上の日本酒をすぐに見つけるため、「精米歩合」によってランク分けされている「吟醸」や「大吟醸」といった言葉について、以下のように説明してくれました。

「タンパク質や脂質が日本酒を豊かで複雑にしますが、フルーティな香りなどの繊細な要素を圧倒することもあります。ほとんどのタンパク質や脂質は外側の層に集中するので、米が精米される割合が多いほど、より滑らかでキレのある醸造酒になるというのが一般的です」。

精米歩合は、精米後のそれぞれの米粒の大きさを示す割合で表されます。割合が低ければ低いほど、より多くの部分が削がれ、米粒の大きさはより小さくなります。今代司の「純米大吟醸 極上」は40%で、つまり米の外側の層60%は削ぎ落とされている、ということです。残った40%の中心部は、精米されていない玄米よりも明らかに小さくなります。精米歩合60%以下の日本酒が「吟醸」と区分され、50%以下が「大吟醸」で、「大吟醸」の方が日本酒の中では最高級のグレードとみなされています。

吟醸や大吟醸は、スッキリとしたフルーティな味わいが特徴で、うっとりするような香りが加えられていることも多いです。精米歩合40%の今代司の「純米大吟醸 今代司 極上」は、クセのない爽やかな水のような飲み口で、口当たりはキレがあり、隠れた香りが広がりますから、口の中でしっかりと広がる後味まで惜しみなく味わってみてください。

「吟醸」や「大吟醸」はスッキリとしていて飲みやすいことが多く、米の中に隠れた味を出すために特別に醸造してあります。そのため、日本酒に初めて挑戦する人には、これらの日本酒を特におすすめします」と、渡辺さんはおっしゃっていました。

酒蔵オリジナルに注目

「高価なものを試した後は、ここにしかない特別なものを探してみるといい」と、渡辺さんはおっしゃっていました。定番のものに加えて、多くの酒蔵では、特別な技術や材料を使って自由に醸造したその酒蔵ならではの代表的な商品を提供しており、それらが、その酒蔵の魅力を最も表現しているのです。

今代司の自慢の逸品は、「木桶仕込み純米大吟醸 今代司」で、試飲室の真ん中に鎮座していました。この唯一無二の日本酒は、スギの木で作られた伝統的な桶で醸造されたものです。木桶での酒造りというのは、現在の酒産業では、スチール製のタンクに取って代わられてしまった形態で、ほとんど失われた仕込みの形態です。2014年から今代司は、この昔ながらの酒造りを蘇らせるべく、日本に残存する数少ない桶屋(木製の樽を作っている事業者)から木桶を注文しました。

「天然の木の荒く有機的な性質は、醸造を予測不可能にし、酵母や麹のような生きた原料の培地が木と特有の方法で相互作用し、ときに予期しない味を創り出します。もちろん望んだものとは違う酒が出来上がるというリスクも常に伴いますから、ほとんどの醸造所がスチール製のタンクによる確実さを好むのも、このことが理由になっています。しかし、木桶仕込みこそが醸造をはるかに面白くさせてくれるものなのです!」と、渡辺さんは語ってくれました。

この昔ながらの手のかかる方法で木桶仕込みの日本酒を醸造しているのは、日本にたった20酒蔵ほどで、当然、ほとんどの試飲コースのメニューには、木桶仕込みの日本酒は載っていないでしょう。

とはいうものの、多くの酒蔵がプライドをかけて独自のオリジナルな日本酒を創っていますから、酔いが回る前に、せひ試してみてくださいね!

季節ごとの日本酒

酒蔵オリジナルに対して、つづいては、1年を通して定期的に販売される期間限定の「季節の日本酒」をご紹介しましょう。今代司を訪ねたときに販売されていたのは、「いざよい」という、甘さと酸味の対比を調和させるように配合された、秋の日本酒です(上記の写真)。

「試飲コースで試飲するときは、絶対に季節の日本酒を探す時間をとって、最大限まで味わい尽くすようにしてくださいね!」と、渡辺さんはおっしゃっていました。

秋は「ひやおろし」の季節でもあります。「ひやおろし」とは、普段は2回の火入れを行うところ、1回のみ行い、夏の間に熟成させた、季節の日本酒で、スッキリとした、けれどもまろやかな味わいを持っています。「ひやおろし」は、日本で9月から10月に入手可能ですが、早いところでは8月中旬ごろに販売するところもあります。

その他の季節の日本酒には、醸造されたばかりの「新酒」と呼ばれる日本酒があります。冬や春の醸造の季節の間やその後に販売されることが多い日本酒です。「新酒」は、火入れをしないことが多く、「搾りたて」という名前でも販売されています。「搾りたて」というのは英語で「freshly pressed」といい、この日本酒は爽やかで刺激的な味で、醸造したばかりのフレッシュな味が味わえることから、多くの人を魅了しています。さらに、暑く湿気の多い夏の間には、暑さを凌げるよう飲み口が涼やかに作られた、火入れなしの「生酒」という日本酒を、多くの醸造所が販売しています。

手頃な価格の地酒もなかなか侮れません

品質の劣るものは専門家から敬遠されてしまうビールやワインとは異なり、地域や近隣の手に入りやすい安価な日本酒を飲むことも、日本酒の全容についてより広く理解できるのでおすすめです。」と、渡辺さんはおっしゃっていました。

このような日本酒(「普通酒」や「本醸造」などと呼ばれることが多い)は、日本人が日常的に慣れ親しんでおり、価格も手に取りやすいように設定されています。いままでに述べてきた特徴を持つ高品質な醸造酒と比べてみると、味や飲むシーンの違いを実感することができると思います。酒蔵で入手できない場合は、ほぼ確実に地元の酒店の目に留まりやすいところに置いてあるはずです。

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甘口の日本酒:日本酒度で味蕾(みらい)を生き返らせましょう

渡辺さんによると、辛口や季節の日本酒をもう少し楽しんだ後は、甘口のコーナーがおすすめだそうです。「人によりますが、3、4杯飲んで酔いが回ってくると味覚が鈍くなってきます。しかし、芳醇で甘い味は感じやすいので、一度に全ての試飲をするのであれば、そのような時に甘い日本酒にチャレンジするのもおすすめです」と、渡辺さんはおっしゃいます。

今代司の甘口の日本酒の1つに「花柳界」があります。「花柳界」は、魅力的な甘みを加えてスッキリとした口当たりにした日本酒です。砂糖は加えていないので、甘さは、米麹から自然に引き出されたものです。先ほど述べたものと同じ原料から作り出される味でも、多様な幅があるということがよくわかるでしょう。

甘口の日本酒を探すのは簡単で、ほとんどの日本酒に「甘口」という言葉が名前についています(英語で「sweet flavor」)。または、「Sake Meter Value: SMV」(日本語では「日本酒度」)を読みながら、自分で試してみるのもいいですね。「日本酒度」は、日本酒の味をプラスやマイナスの数値を使って表しています。数値が高ければ高いほど、日本酒の味は辛口になり、マイナスの数値は甘さを示します。花柳界は–30よりも小さいマイナスのSMVで、とても甘いということが分かります。さらに甘い日本酒もありますよ。渡辺さんの言葉通り、「花柳界」の芳醇な味は、ほろ酔いでぼんやりとした状態から味覚を蘇らせてくれたので、次の日本酒へと進むことができました。

お酒を飲まない人には、麹甘酒がおすすめ

お酒を飲まない人にはお酒の試飲コースは無意味だと思う方もいるかもしれませんが、全ての人がおいしいと感じられるように、味のよい低アルコール、またはノンアルコール商品の開発に時間を費やす醸造所がますます増えてきています。

ノンアルコール商品の多くは「甘酒」と呼ばれるもので、これは、いつの頃からか分からないような昔から日本で飲まれている、発酵した米を使った飲み物です。お酒を飲む人は、甘酒は最後にとっておくか、少なくとも最高級の日本酒を完全に味わい尽くしてからの方がいいです。渡辺さんがおっしゃるには、「甘酒は日本酒よりも味が重たく、より濃厚です。最後のデザートのような感覚で試飲してもらうのをおすすめしています。」とのことです。

最も一般的な甘酒は「麹」の甘酒で、今代司でも試飲することができます。これまで説明してきた通り、麹とは、「コメコウジ菌(aspergillus orzae)」という菌の日本語名で、醤油や味噌のような発酵食品における基本的な原料です。甘酒は日本酒と同様に醸造されるのですが、アルコールを生成する酵母は入っておらず、シンプルに麹を使って米のデンプンを糖に変化させるのです。麹甘酒は、甘い味で、重厚で、ほとんどポリッジ(オートミールや穀類を水で煮て作った粥)のようなミルキーな食感ですが、驚くほど爽やかで滑らかです。長い歴史を持つ甘酒ですが、その栄養価の高さから、日本では現在再び人気を得ており、いろんな面で身体にいいということで宣伝されていることが多いです。

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まとめ:日本酒の試飲コースの楽しみ方

今代司で学んだことを全てまとめると、日本酒の試飲コースでは以下のような順番で試すのが渡辺さんのおすすめです。

1. 高品質で、辛口の繊細な味わいの日本酒

2. 酒蔵オリジナルのものや、季節限定の日本酒

3. 比較的低価格な地酒(可能なら)

4. 甘く、芳醇な日本酒

5. ノンアルコールの甘酒

「このようにアドバイスしてきましたが、日本酒の文化は流動的で自由ですから、今代司を訪ねてくれる人には、自由に味わってほしい」と渡辺さんは強調していました。リサーチや計画を立てることも大切ですが、精米歩合や酵母の種類、醸造方法などのことに気を取られて、最も大切な目的である、日本酒を愉しむ、ということを忘れてしまう人も多いと渡辺さんは感じているそうです。

「1日の終わりに、味をどう感じるのかを実際に体験するのはお客様です。ですから、心を空っぽにして、なんでも良いので味を感じたらその味に集中してみてください。おすすめした順番は、日本酒デビューには最適ではありますが、基本は掴めたと思ったら、自分自身が感じるままに道を探してみてください。日本酒にルールなんてないですから!」。

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試飲で日本酒の繊細な世界に分け入ってみませんか

今代司酒造と渡辺さんの案内のおかげで、複雑な日本酒の世界に対する理解を深めることができました。高価で極上な大吟醸からノンアルコールの甘酒まで、基本となる同じ原料から造られるとてつもない味の広がりには、驚くばかりです。もちろん、日本には何百という醸造所があり、今回ご紹介した日本酒はそのうちのほんの一部です。白濁した無濾過の日本酒「にごり酒」や、手間ひまかけて手作業で酒母を造る「生酛(きもと)造り」の日本酒、ビンテージものの日本酒「古酒」などなど、その他にも豊富で魅力的な日本酒が待っていますよ!試飲コースにご自身だけで参加する前に、この記事がガイドとなり、初めての日本酒の体験が、楽しく、有意義なものとなりますように!

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この記事に掲載されている情報は、公開時点のものです。

ライター紹介

Steve
Steve Csorgo
オーストラリアのメルボルンで生まれ育ち、現在は新潟市在住。趣味は、地酒を見つけること、読書、そしてできるだけ多くの日本国内を旅すること。日本の好きなものは、温泉、史跡、手つかずの自然。伝統工芸品、風変わりだが魅力的な町、興味深い地元の話などを書くのが好き。
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