夕日の丘商店街 ~昭和のエネルギーが溢れる街で、1960年代の日本にいるような感覚を味わう

東京から埼玉の県境を北上したすぐの場所に、老舗の遊園地「西武園ゆうえんち」が運営する「夕日の丘商店街」があります。「夕日の丘商店街」には、日本の昭和時代ならではの懐かしさや美的感覚、遊び心が溢れており、その時代に親しまれていたグルメや撮影スポットを楽しむことができます。今回のtsunagu Japan特集記事「Area of Japan ~友達に案内したいおすすめスポット」では、この街の古き良き雰囲気に飛び込み、活気あふれる地元民たちに混じって、かつての日本を満喫してきました。

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西武園ゆうえんち 〜古き良き日本の魅力を再現した老舗の遊園地

1950年に埼玉県所沢市に開園した西武園ゆうえんちは、2020年に開園70周年を迎えました。それに伴い、今後も長きに渡って地域の人々や観光客に楽しんでもらうため、初の大規模リニューアルを実施しました。2021年にリニューアルオープンした遊園地は、昭和の面影を残しつつ、「心あたたまる幸福感に包まれる世界」というコンセプトで生まれ変わったのです。

このプロジェクトでは、時代とともに古くなったものも貴重な歴史遺産と考え、アトラクション自体を大きく変更するのではなく、既存の構造や施設を大切に残しました。定期的に点検を行い、安全・安心を確保しながらも、昔ながらの趣を保つことで、懐かしく感じていただけるようにしました。多くの人に愛される西武園ゆうえんちとなるよう、歴史の積み重ねを重視したのです。

時を経ることで、古さを懐かく感じて頂き、その良さを活かして再生した遊園地は、リニューアル後に多くのゲストが訪れ、SNSでも話題になっています。

夕日の丘商店街 〜日本の昭和の遊び心に触れる

西武園ゆうえんちの「夕日の丘商店街」は、奇跡の経済成長を遂げた昭和30年代の日本を再現しています。新しい産業の育成や国際貿易取引きの拡大、インスタントラーメンやコーヒーなど当時としては革新的な商品の登場、マスメディアの普及、1964年には新幹線が開通して交通網が整備されるなど、この時代は飛躍的な発展を遂げました。

経済が発展し、生活水準が向上したことで、冷蔵庫やテレビなどの電化製品がブームとなり、それは日本の多くの一般的な家庭にも普及しました。豊かさと希望に包まれたこの時代の10年間は、とても活気に満ちて人々の情も溢れていた時代として、今日でも誇らしく記憶されています。

西武園ゆうえんちは、そのような昭和の暮らしの温もりを体現しており、遊園地に向かう電車の中からタイムスリップしたかのような気分を味わえます。遊園地の入口広場の目の前にあるのが西武鉄道山口線(通称・レオライナー)の西武園ゆうえんち駅です。新宿駅から50分ほど鉄道に乗って到着するこの駅は、日本で最も短い路線のひとつ。古き良き時代を彷彿とさせる趣のある駅舎になっています。

こちらの路線では、1960年代に使用されていた茶色と黄色が基調の小さな鉄道が走っていて、この電車に乗るとまるで昭和時代にタイムスリップしたかのような気分にさせてくれます。

リニューアルプロジェクトの中心地「夕日の丘商店街」に足を踏み入れると、そこには昭和の建築物を囲むように、当時のお店や看板、食べ物などが並ぶノスタルジックな風景が広がっていました。わずか150mの距離に、飲食店や小売店などの体験型店舗が15店舗、そしてパフォーマンスステージやフォトスポットもあり、30種類の施設で昭和の日本生活を垣間見ることができるのです。

まるで昔のポラロイド写真に映る街のようで、レトロな佇まいの中に生き生きとし雰囲気が宿る商店街では、昭和の流行歌が朗々と流れています。地元の「住人」たちの威勢のいい声に迎えられ、1960年代の日本の熱気を感じながら、少しずつ歩いて行くことができました。

はじめに 〜日本円を「西武園通貨」に替えて、地元新聞(無料)を手に入れよう

この日、私はノスタルジックなレジャーやショッピングを心ゆくまで楽しみたいと思い、まずは「夕日丘郵便局」で両替をすることにしました。

西武園ゆうえんち内では、現代の日本円では料金を支払えず、西武園通貨という古めかしい通貨が必要になるのです。この通貨の種類は10円札と100円札があり、紙幣には手塚治虫の人気漫画「ジャングル大帝」をモチーフにしたキャラクターがデザインされています。手塚治虫氏は、日本漫画の開拓者的な存在として知られ、日本で最も影響力のある革新的な漫画の数々を生み出しました。そして、1960年代にはいち早くカラーアニメーションを制作し、テレビ放映して大人気を得ることに成功しました。

昭和を象徴する赤くて丸いポストを見つけたり、忠実に再現された昭和式の郵便局を訪ねたり、商店街で当時の物価を見たりするのも楽しみ方のひとつです。現代の電子マネーとは違い、昔ながらのお札での支払うことには温かみを感じられるでしょう。

もし1日楽しむなら「300園(3,600円)」分の「西武園通貨」を購入するのがおすすめです。園内の郵便局だけでなく、チケット売り場で入場券とセット購入すると、さらにお得になりますよ。「1日レヂャー切符」と「西武園通貨」をセットにした「得1日レヂャーパックは、単品で購入するより100円から300円安くなります。

*西武園通貨は発行日当日のみ有効です。
*西武園通貨は、払い戻しはできません。
*ロッカー、自動販売機、ベビーカーレンタルでは実際の貨幣(円)が必要です。

夕日の丘商店街の入り口にある「亀山新聞販売所」で、地元の新聞を手に入れるのは、ここでの一日を充実させるための基本です。イベントやお祭りはもちろん、最新のグルメ情報も満載で、地域の暮らしのガイドマップとして重宝します。

 

夕日の丘商店街の見どころ

喫茶ビクトリヤ:レトロな喫茶店で本格的な昭和料理を味わう

こちらは商店街で最も人気のある飲食店のひとつで、ピーク時には入店待ちの行列ができることもある喫茶店です。地元の人の勧めもあって、早めの昼食にはなりましたが、まだお客さんがあまりいないオープン後の時間帯に向かいました。

独特の景観の喫茶店とそこで提供される料理は昭和時代と強く結びついており、「昭和レトロ」という言葉まであるほどです。個人で経営する昭和レトロな喫茶店は、店主のこだわりや個性的な性格が反映されたりします。そのため、常連客が落ち着ける隠れ家的な空間になったりするのです。

昭和レトロな雰囲気を見事に表現し、昭和の喫茶店文化を堪能できる「喫茶ビクトリヤ」。扉を開けると、観光スポットとは思えないほど落ち着いた、そして目を引くディテールにあふれた憩いの空間が広がっていました。入り口には可愛らしいロータリーフォンが置かれ、洗練されたランプや椅子など往時を偲ばせる装飾が施されています。本棚には懐かしの本や雑誌が並んでいました。

窓際の席に座れば、こぢんまりとした店内と、喫茶店の外の活気溢れる夕日の丘のコントラストを眺めて楽しむことができます。また、メニューを見れば、日本の喫茶店での知られざる食文化に驚かされることでしょう。

昭和の料理は、洋食に和のテイストを取り入れたものが多く、海外の人にも意外となじみがあるメニューになっているかもしれません。ここには、昭和の代表的な喫茶店メニューが揃っており、その鮮やかな色彩と風味が、テーブルを埋め尽くします。

メロンソーダとバニラアイスにマラスキーノチェリーを添えた「メロンクリームソーダ」は昭和スタイルの喫茶店の定番。一口飲むとソーダの爽やかな泡と、アイスとメロンシロップのまろやかな甘さが広がり、爽やかな味と食感が融合したドリンクになっていました。

クリームソーダが日本に上陸したのは1902年、資生堂の創業者・福原有信がアメリカのソーダファウンテンに感銘を受け、輸入して銀座の資生堂薬局内にソーダファウンテンコーナーを開いたのがきっかけだそうです。日本での誕生は明治時代でしたが、クリームソーダが全国に広まったのは高度経済成長期である1960年代。家庭でメロンやアイスクリームを食べることはまだ裕福な人々の特権であったため、クリームソーダは外出時に味わうことのできる特別な飲み物として広まっていったのです。

もうひとつ、昭和の人たちの定番といえば、「スパゲティナポリタン」でしょう。1927年創業の横浜のホテルニューグランドで提供されたのが始まりで、アメリカ軍将校がスパゲッティにケチャップをかけて食べる習慣に影響を受け、時代とともにタマネギ、マッシュルーム、ピーマン、ベーコン、ソーセージなどさまざまな食材と組み合わされるようになり、現在に至っています。お店によってさまざまですが、喫茶ビクトリヤのスパゲッティ・ナポレターナは、甘すぎず、通常より太めのスパゲッティを使っています。個人的に、今まで食べた中でも一番美味しいナポリタンでした。

また、食事の締めに頂いた「プリン・ア・ラ・モード」は、カスタードプリン、フルーツ、生クリームを贅沢に使ったデザートです。こちらも横浜のホテルニューグランドが発祥の地だそうです。米軍の高級将校の奥様方に召し上がっていただくために考案された、見た目も華やかでボリューム感もあるメニューです。洗練されたデザートを表現するために、フランス語で「流行の」を意味する"アラモード "という言葉がメニュー名に使われました。

昔ながらの庶民グルメを味わう

喫茶ビクトリヤの外には、まだまだ昭和の食の世界が広がっています。商店街をぶらぶら歩いていると、だんだんお腹が空いてくるもの。夕日の丘商店街では、軽食からスイーツまで、豊富なメニューを取り揃えています。日本の屋台文化を代表するような、どこか懐かしさを感じるものが満載です。

・鶴亀堂 〜地元産の抹茶だんごを食す

食べ歩きを楽しむ私たちが次に立ち寄ったのは、明るく上品な外観が目を引く焼きだんご屋「鶴亀堂」。この店は、江戸時代から続く老舗団子屋をイメージしています。江戸時代から続く老舗のお団子屋さんは、家族で営んでいることが多く、独自の製法を守り、安価で香りの良いお団子を作っているのが自慢だそうです。

鶴亀堂には「黒蜜きなこだんご」「みたらしだんご」などの定番商品がありますが、今回は地元産の狭山茶を使った「狭山茶だんご」を購入しました。お茶の独特の甘みが、焼いたお団子のモチモチ、サクサクとした食感とよく合っていました。

・肉のおほみ 〜素朴ながら多くの日本人に愛されている揚げ物、クロケット(コロッケ)を味わう

商店街からいい香りが漂ってきたら、それはきっと「肉のおほみ」でしょう。こちらはクロケット(コロッケ)とメンチカツが名物で、本当に多くの人から高い評判を得ています。肉のおほみのクロケット(コロッケ)は、サクサクとした食感です。一口食べるとふわふわの具とパン粉の食感が絶妙にマッチしているのを感じられるでしょう。

コロッケは明治時代に豪華な外国料理として日本に紹介され、大正から昭和にかけて主原料の価格が下がったことで、庶民的で安価な食べ物として広く普及したのだそうです。現在、コロッケはマッシュポテトと刻んだ肉というシンプルな材料で作られ、とても家庭的なメニューとして親しまれています。日本中のコンビニエンスストアで売られているほど人気がありますが、やはり出来立ての味に勝るものはないでしょう。

・豊川氷店 〜日本の祭りの定番、かき氷で涼をとる。

商店街の熱気から、ちょっと体を冷やしたい?そんなときはぜひ豊川氷店へ。このお店では、日本の夏を代表する素朴なスイーツであり、日本のお祭りの定番でもある「かき氷」を提供しています。赤い文字で記された「かき氷」の旗が目印です。店頭に設置された年代物のかわいらしいかき氷機で作られる、フルーツ味のシロップがかかった爽やかなかき氷を味わってみてください。

かき氷は平安時代から貴族の嗜好品として知られていましたが、昭和になってかき氷機が普及し、誰もが食べられるようになったのです。豊川氷店では、いちご、レモン、メロンの3種類のかき氷を味わうことができます。

・棚牡丹堂 〜洗練された和洋菓子、ウイスキーボンボンを味わう

夕日の丘商店街の道中にある和洋菓子店「棚牡丹堂」も実に興味深いお店です。お酒の入ったお菓子を砂糖でコーティングした「ウヰスキーボンボン」など、洗練されたお菓子を味わうことができる。

駄菓子 夢見堂 〜昭和の懐かしい駄菓子やお土産が勢揃い

こちらはアメリカのペニーキャンディーのような甘くて香ばしい庶民のお菓子、「駄菓子」を売る店です。

駄菓子の語源は、「だ」と「むだ」を合わせたものだそうです。お小遣い程度で買える、カラフルで楽しいパッケージのお菓子のことで、「駄菓子」という言葉は、「だ」と「かし」からきています。昭和の時代は「駄菓子屋」と呼ばれる駄菓子を専門に扱うお店が多くあり、子供たちの放課後の定番の遊び場として人気を博していました。残念ながら、現在では駄菓子屋の数は少なくなり、一般的な街中ではそれほど見かける機会はなくなりました。

店内には色とりどりの箱が並び、その中には食べたことのないような不思議なお菓子がぎっしりと詰まっています。店員さんに地元の人のお気に入りを聞きながら、自分が気になるもの探すとよいでしょう。お店の中には未知の駄菓子が所狭しと陳列されています。

スタジオジブリの映画に出てくるようなカラフルな砂糖菓子「こんぺいとう」や黒砂糖を揚げた「かりんとう」など、甘さが際立つ駄菓子のベストセラーが揃っています。香ばしい駄菓子としては、「ソースカツ 」もおすすめです。日本の「とんかつ」を安価なスナック菓子にしたもので、意外とクセになる味です。

昭和の雰囲気が漂う、ヴィンテージフォトスポット

夕日の丘商店街は、建築や商店街の研究を重ねながら、大正・昭和の建築様式を意識して設計された、ノスタルジックな雰囲気にあふれたスポットです。

個人的に商店街で最も魅力的だと感じたのは、関東大震災後の1923年から1938年にかけて行われた大規模な区画整理で初めて登場した「看板建築」と呼ばれる装飾性の高い建築様式でした。こちらは町屋に代わる建築物として登場し、全国の中小商店でよく採用されたそうです。当時は鉄筋コンクリートの建物を簡単に建てることができなかったため、建物本体は木造で、その上に銅板やモルタル、タイルを貼るのが一般的でした。この様式の最大の特徴は、巨大な一枚の看板を思わせる大きくて平らなファサードで、派手な店構えや凝った看板などの装飾がアクセントになっている場合が多いのです。

そんな不思議な建物の集合体であるこの街は、どの施設も絶好の撮影ポイントになっています。パステルブルーの看板が印象的な床屋さんから、突き当りにある銭湯まで、目の前に広がるのは色彩のダイナミックな融合で、昭和の賑わいと住民の楽しい人柄がまで混じり合い、思わず飛び込んで仲間入りしたくなるほどでした。私はお店の人がいない建物では、すかさずカウンターに陣取り、用意された小道具を使って、楽しい写真を撮りました。

「魚勝」では、魚の箱や貝殻に囲まれながら、昭和の魚屋の生活を1日で体験してみました。「青果八百屋」では、大根やキャベツなど日本の代表的な野菜の産地を見ながら、1960年代の八百屋の気分を味わうことができました。

そして、当時の日本の大衆文化に触れ、レコードショップでささやかなレコードコレクションを眺めたり、昭和スタイルの赤いダイヤル式電話で電話をかけたりする楽しさを体験しました。タバコ屋、駅、レストラン、喫茶店など、日本の街角の代名詞ともいえるこの電話機は、小銭を入れ、ゆっくりとダイヤルを回すことで電話番号を入力するのです。

この街の雰囲気を演出するのは、他でもない訪れる人自身です。夕日の丘商店街では、当時の服装を再現したクールなヴィンテージウェアで散策する人が多いので、街はより一層活気に満ちているように感じました。私たちも負けじと、レトロな風景を引き立てるような服装で、その土地のファッションセンスに溶け込もうと挑戦してみました。

昭和の香り漂うお祭りやショーで地元の人と触れ合う

夕日の丘商店街は、活気ある昭和の町並みに浸れるだけでなく、1960年代に暮らしていたような日本の人々と交流できる場所でもあります。歩いていると、情に溢れる町の人たちが、いかにも昭和っぽい人柄で歓迎してくれる。お人好しでちょっとおせっかい、でもいつも前向きでエネルギーに満ちあふれていて、それは昭和の温かさと未来への希望を体現しているようでした。

警察官から魚屋に至るまで、この陽気なキャラクターの人たちは、私たちに挨拶をし、途中で立ち止まっては雑談もして、町の生活に完全に溶け込んでいました。

夕日の丘商店街が最も熱くなるのは、まさに住民の皆さんが集まるこの時です。1日1回、午後12時から商店街全体で行われる「ブギウギ祭り」。歌って、踊って、自慢の芸を披露する、まさに昭和の熱気を感じられる楽しいひと時。

このブギウギ祭りは、商店街全体を巻き込んで行われ、訪れた人々はその熱気に引き込まれ、その場の雰囲気に身を任せます。

夕日の丘商店街では様々なパフォーマンスが町を盛り上げ、住民の一日の過ごし方を垣間見ることができます。泥棒を捕まえようとアクロバティックな動きを見せる警察官、通行人を巻き込んでラジオ体操をする駐在、古い鍋だけで上手に太鼓を叩き始める荒物屋さんなど、通りかかる度に楽しみを提供してくれます。この日、私は本当に「夕日の丘」の住人になったような気がしました。

西武園ゆうえんち「夕日の丘商店街」で昭和の一日を過ごす

レトロな「夕日の丘商店街」で、ワクワクするような昭和の時代にタイムスリップ。美しい日本の街並み、元気で楽しそうな人々に囲まれながら、1960年代の日本を満喫するノスタルジックなひと時を過ごしてみるのはいかがですか?

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Stefania
Stefania Sabia