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レトロな東京がここに!ノスタルジーを感じる喫茶店や雑貨など、中央線ならではのカルチャーを体験しよう

近年のレトロブームの再来に伴い、都内のレトロカフェや古着屋が、日本の若者や外国人観光客の注目を集めています。お祭りで有名な東京の高円寺、阿佐ヶ谷一帯は、日本の若者に人気があるショッピングエリアの一つです。そんな特色あふれる中央線沿線には、古着屋や喫茶店などに加えて、駅周辺の商店街を指して『中央線カルチャー』という言葉もあります。今回はtsunagu Japanのオリジナル取材企画「Area of Japan」の中央線沿線スポット特集シリーズとして、荻窪、阿佐ヶ谷、高円寺駅周辺の、ノスタルジックで古き良き時代の風情があふれるスポットを訪ねてみます。

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ノスタルジックな旅 最初の駅:荻窪

JR東日本中央線の「荻窪」は、買い物&エンタメの聖地・新宿に直通し、丸ノ内線の始発駅でもあり、おしゃれな銀座にも直行できるので、交通利便性がかなり高い場所と言えます。中央線カルチャーと忙しい職場との間で、ちょうどいい距離に位置する荻窪駅は忙しい都会人のベッドタウンになっています。頑張って働く人たちにとっては、憩いの場にもなっているのです。駅の北口には、ショッピングセンターや戦後の商店街を改装したマーケットが併設されていて、レトロな雰囲気はあまり感じられません。しかし、歩いて1分の距離にある「荻窪北口駅前商店街」は、北口の風景とは全く異なり、昔ながらの雰囲気を醸しだしています。
 

「荻窪邪宗門」

戦後の闇市から始まったといわれている荻窪北口駅前通商店街の短い通りには、喫茶店のほか、ラーメンやうなぎの老舗がいくつかあります。
 
92歳の風呂田和枝さんが店主をする「荻窪邪宗門」は、オープンから68年以上も経っている老舗です。視力は落ちたとはいえ、それでも何十年もの間、毎日、2階建ての狭い店内を上がったり降りたりしています。風呂田和枝さんにとって、また多くの人にとって荻窪は、住みやすい場所であり、マイホームでもあります。一方で、この約60年、終戦(日本語では、第二次大戦が完全に終結したことを指します)から2023年にかけて、荻窪北口駅前商店街にある店の盛衰を見ていると、どこか名残惜しさと寂しさを感じずにはいられません。

開店当初、カメラマンだった夫の風呂田さんは、コーヒー豆の品質にこだわっていただけでなく、2階にスタジオ用の背景シートを取り付け、店内で邪宗門の商品の写真を自ら撮影してメニューにしていました。ご主人が亡くなってから何年も経った今でも、風呂田さんのこだわりで、店内のメニューは更新されていません。まるでご主人と一緒に、荻窪で還暦をこえる年数の間、経営し続けているようです。

表紙がまだら模様になっているメニューを指して、風呂田さんは「このメニューのコーヒーカップとソーサーはとっくに替わっていて、今使っているものとは違うんです」と照れくさそうに笑っていました。

1階はスタッフがコーヒーを沸かすスペースで、2階にはテーブルと椅子が6組しかなく、普段は多くが個人のお客様です。ですので、6人で1席ずつ座ってしまえば、小さなお店もすぐ満席になってしまいます。また、お客様は食事が終われば店を出るレストランとは違い、荻窪邪宗門に来たお客様は、コーヒーや店内の雰囲気を楽しみ、本を読んだり、パソコンを打ったりして、一度席に着くと腰を上げるまで少なくとも2時間はかかります。一人で喫茶店に来るお客様の意向を尊重しているため、ほとんどの場合、風呂田さんはお客様に話しかけることはないようです。

お店のドアが控えめで目立たないため、客層は日本人が中心ですが、中央線沿線に長く住む外国人のお客様も時々います。純和風の喫茶店カルチャーを楽しみたいのなら、「荻窪邪宗門」でコーヒーを飲むことをお勧めします。風呂田さんは、「荻窪邪宗門」を初めて訪れたお客様には、看板メニューのコーヒー(blend coffee)を注文することをお勧めしています。濃厚で爽やかなコーヒーにカラメルビスケットの組み合わせは、そのシンプルで美しい味わいにより、まるで周りの時間がゆっくり過ぎていくように感じます。ブラックコーヒーのほか、生クリームを加えたウインナーコーヒーや、ウイスキーを加えたアイリッシュコーヒーもおすすめです。

店主が高齢の為、メニューの提供にはお時間がかかる場合があります。急ぎではなく、お時間に余裕のある際にご訪問頂くのがよいでしょう。

ノスタルジックな旅 二番目の駅:阿佐ヶ谷

阿佐ヶ谷の名前の由来は、日本の南北朝時代(西暦1337年〜1392年、鎌倉時代と室町時代の間)にさかのぼります。文献によると当時「あさかや殿」という地方の豪族が暮らしていたことから、この地域が「あさかや」と呼ばれるようになったという説があります。大正時代末期から第二次大戦前にかけて、阿佐ヶ谷界隈には多くの文人が集まるようになり、酒を飲み、将棋を指し、文芸の腕を競い合いました。日本を代表する文豪の太宰治や川端康成もよく招かれていたといわれています。 

トイバーガー

もともとアメリカ雑貨メーカーに勤めており、ずっとハンバーガーの形をした小物に夢中だったという店主の永沼さん。長年にわたってさまざまなハンバーガー雑貨を集めてきましたが、日本にはハンバーガー雑貨を専門に扱う店がないと思い、阿佐ヶ谷駅に腰を据えて、ハンバーガー雑貨をはじめました。きらびやかな店構えのショップは、今年で12年目を迎えました。

筆者は取材前に、永沼さんに大好きなハンバーガー店やハンバーガーのトッピングのおススメを聞くつもりでしたが、思いもよらず取材の冒頭に、永沼さんご自身から、自分はハンバーガーを食べることにあまり興味がないということを伺いました!「ハンバーガーを食べる」ことよりも、ハンバーガーの形をした雑貨を集めることが、彼女をワクワクさせているのです。

初めてトイバーガーを訪れたお客様は、品数の多い店内で、どのようにして宝探しを楽しめばよいのでしょうか。コツは何もないので、気長に一つ一つの商品を見てもらうしかないですねと、永沼さんは笑って言いました。

店内で一番好きな商品や印象に残った商品を尋ねると、永沼さんはすぐに店の後方のオフィスに駆け込みました。ガサガサと探してくれたのは、昔購入したアメリカ・メトロポリタン美術館(MOMA)のハンバーガーの形をした小銭入れでした。この小銭入れは、彼女がこの「トイバーガー」を立ち上げたきっかけでもあるそうです。精巧でリアルなデザインから、永沼さんがハンバーガー雑貨に熱狂するのもわかるでしょう。

近年、「トイバーガー」は、アパレルショップと共同で、ハンバーガーマスコットキャラクターをあしらったフーデットパーカー、Tシャツやニット帽など、他の業界とも提携し始めています。今後も様々なメーカーとのコラボを継続する計画だそうです。

ノスタルジックな中央線を主旨とした本編ですが、永沼さんが改めて強調したいのは、店内の商品はほとんどが新品だということです。というのも、アメリカン雑貨のレトロなデザインが多いので、中古雑貨やアンティークグッズと誤解されることが多いからだそうです。熱心な永沼さんは、いつも訪れたお客さんと話をするのを楽しみにしていますから、阿佐ヶ谷に来た際は「トイバーガー」に足を運んで、お気に入りのハンバーガーを探してみてはいかがでしょうか。

ノスタルジックな旅 三番目の駅:高円寺

東京の人が、純情商店街、古着、ロック、阿波おどりと聞けば、すぐに「高円寺」という3文字が出てくるでしょう。若者から老人まで、幅広い人たちが商店街を行き来しています。夕方の帰宅時間に近いためか、にぎやかな高円寺駅周辺は、少し混雑していましたが落ち着いた雰囲気だったので、むしろ筆者に一種の安心感を与えてくれました。

古い紙モノ ハチマクラ

高円寺駅から徒歩5分の距離にある「古い紙モノ ハチマクラ」は、店長の小倉さんの丁寧なケアのもと、15周年を迎えました。ガラスのドアを開けると、ヨーロッパのフリーマーケットの中にいるかのような雰囲気が広がっています。紙製品のほか、店内には骨董品のハンドバッグや生活小物も並んでいます。

小さい頃から様々な紙や便箋、小さなカード、包装紙を集めるのが好きだった小倉さんは、グラフィックデザイナーになってからも、日本国内や世界各地で面白い紙製品を集め始めました。「ハチマクラ」は、彼女のコレクター人生の延長線上にあります。

小さなものを集めるだけでなく、小倉さんは一つ一つのアイテムが存在した年代や歴史的価値を理解するために、多くの情報を調べています。どの紙にも、どのカードにもこの世に存在するストーリーがあります。取材中、小倉さんは筆者に、世界各地の便箋シリーズを紹介してくれました。米国のロマン、フランスの精巧性、東欧のスタイルはより可愛く柔軟性があるように見え、便箋だけで、筆者も世界一周をしたかのような気分になりました。

店内で最も年代が古い商品は、西暦1700年代の外国からの手紙です。便箋は非常に古く、手入れも難しく、破れやすいのですが、小倉さんは紙に触ることを制限することはありません。逆に、喜んでお客様に手で触れさせてくれます。触れることで、その当時の精緻な工芸技術を実感することができるのです。

小倉さんは、日進月歩の現代において、失われた印刷技術をいかに保存するかには、責任と努力がとても必要だと言います。というのも、昔ながらの方法に則って製造できる古い印刷工場が少なくなっているからです。高い製造効率を追求する人類は、ゆっくり丁寧な仕事をする古い工場を徐々に淘汰していきました。小倉さんのように、プロのデザイナーでも、昔の技術を使ってその当時の印刷効果を達成することは難しくなっています。そのため、自分の力を尽くして当時の紙の美しさを保存し、その魅力を多くの人に伝えることが、小倉さんの願いであり、原動力にもなっているのです。

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おわりに

懐かしい時間の流れを今も感じられる中央線沿線は、今なお様々な表情を見せてくれています。今回は「ノスタルジック」をテーマに、JR東日本中央線の荻窪、阿佐ヶ谷、高円寺駅周辺のお店、地元に根付いた素朴な老舗喫茶店、ハンバーガーをテーマにした雑貨店、古紙を主役にした古道具店を紹介しました。実際にお店を訪ねてみることで、慌ただしい現代生活の中でも、時間の積み重ねの素晴らしさが大切に守れていることを発見しました。皆さんも中央線沿線のスポットで、古き良き時代を振り返ってみてはいかがでしょうか。

この記事に掲載されている情報は、公開時点のものです。

ライター紹介

Shirley
Shirley
東京在住の元客室乗務員で、次の旅の目的地をいつも楽しみにしています。日本のさまざまな空港へフライトで巡り、その土地の美しさを発見するのが好き。地域の文化や深い旅行記の執筆・共有をたくさんしていきたいです。
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