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創業100年を迎える老舗海苔店に聞いた、豊かな海の恵み「海苔」の美味しいお話

皆さんは、日本の海苔を食べたことがありますか?紙のように薄く黒に近い濃緑色で、歯ごたえがパリパリの海苔は、日本の伝統食品の一つです。栄養価が高いことで知られ、寿司やおにぎりなどに使われるほか、子供の頃からそのまま食べるなど、日本人にはたくさんの習慣があります。軽くて手軽に楽しめる海苔は、日本の家庭料理としてだけでなく、観光土産としても最適です。今回は日本の文化の魅力をtsunagu Japan編集部が伝える<Culture of Japan>シリーズ記事として、築地で長年営業をしている老舗「伊藤海苔店」の専門家に、上質な海苔の選び方や美味しい食べ方などの話を聞いてきました!

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※この記事は伊藤海苔店様のご協力を頂き、作成しました。

海の恵み、海苔

日本では、おにぎり、寿司、お茶漬け、サラダからパスタのトッピングまで、一般家庭や高級レストランなどのいたるところで海苔を目にすることができます。海苔には「旨味成分(グルタミン酸など3つのアミノ酸成分)」がたっぷり含まれており、昔から日本人に親しまれてきた食材の一つなのです。

海苔の原料は海の沿岸に生息する海藻の一種です。海藻類には、見た目も味もさまざまな種類があります。原料になる海藻をとって洗い、細かく刻みます。そして、和紙を制作するための紙漉きと似たような方法で水と一緒に枠に流し込み、乾燥させて形を整えるという一連の工程を経て、私たちがお店などで目にする海苔が出来上がります。

現在、日本の海苔は主に養殖で生産されております。養殖と言っても海苔は魚を養殖するのとは違い、餌を与え続ければ必ず安定した収穫量が得られるわけではありません。

その年の気温や海水温、降水量などの状況によって、海苔の色、香り、味、食感が変化します。よって、海苔問屋などの専門家は目利きを身につけ、品質の良い海苔を吟味するスキルが大切になってくるのです。

面白いことに、海苔の形や規格サイズは、スーパーマーケットや家庭では、メーカーや産地が異なっていても同じになっています。実はこれは、300年前の江戸時代から現在に至るまで受け継がれ、浅草和紙の成形と水切りの仕方などを真似て誕生した方法なのです。

乾燥工程を簡略化し、海苔を薄くして運搬しやすいようにするため、寸法が統一されました。市販の海苔のパッケージに表記されている「全型」は、縦21cm、横19cmで全国統一規格となります。

海苔はどこで買える?

日本では海苔を、一般的なスーパーで購入することができます。どこのスーパーに行っても海苔は棚にびっしりと並んでいて、透明なプラスチックに包装されて売られています。板海苔、味付け海苔、細切りきざみのりなど、その種類は様々です。一方で、本当に美味しい本格的な海苔の味を求めるなら、海苔問屋や専門店で買うことをお勧めします。

プロの海苔問屋

前述したように、海苔の品質は海の環境要因で年々変化するため、長年海苔を扱っている専門店で、安定した品質を保つ努力をしている専門家から購入するのが安心でしょう。

海苔屋の仕事は、日本全国の海苔漁師や生産者から海苔を買い付けることです。主な産地は九州の有明海(佐賀、福岡、熊本)、瀬戸内海、東京湾、仙台湾(宮城)などが有名です。 買い付けられた海苔は乾燥、焼成(焼釜で加熱すること)、包装などの加工行程を経て完成されます。そして、飲食店や一般消費者向けに販売されるのです。

100年続く関東の海苔老舗 「伊藤海苔店」

日本の食文化が大好きな外国人編集者にとって、もはや海苔は目新しいものではないですが、まだまだわからないことも多いです。そこで今回は、関東地区を中心に長年営業されてきた老舗海苔店に海苔のお話を聞いてきました。1923年創業、東京の両国エリアで始まった「伊藤海苔店」はその歴史が代々受け継がれ、約100年続く老舗海苔専門店として知られています。 現在は「東京の台所」として有名な築地場外市場と、千葉県市川市に店舗を構えています。

「伊藤海苔店」では、九州・有明産の厳選された焼き海苔を中心に販売しています。この海苔は風味の良さと歯ごたえが特徴で、そのまま食べても、手巻き寿司のようにご飯に巻いて食べても美味しく頂けます。 用途に合わせてカットして使い分ける料理向きの板海苔や、おつまみやお土産に適した手軽に食べられる海苔の缶詰などを扱っています。

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海苔屋の店主が教える海苔の選び方のコツ

100年続く「伊藤海苔店」は現在、4代目・伊藤信吾氏が店主を務められています。伊藤さんは中学生の頃から休日に築地でお手伝いを始め、この家業を継いでからは15年以上の月日が経ちました。海苔焼きの技術一筋の職人だった先代のお父様とは違い、お客さんと「顔の見える関係」を築くことを大切にしているそうです。

「海苔の魅力を世の中に伝えたい」「海苔に関わるすべての人が楽しめる環境を作りたい」という信念のもと、伊藤さんは小売販売に力を注ぐだけでなく、お客さんとのコミュニケーションチャネルを最適化して公式オンラインショップも立ち上げました。普段はお店で国内外からやって来るお客さんをお出迎えする傍ら、余暇を利用して小学校で海苔講師として海苔の知識を教える活動も行われています。

今回は、海苔の素晴らしさを伝えることに情熱を注ぐ伊藤さんに、上質な海苔の見分け方、選び方などを教えていただきました。

海苔が一番美味しいのはいつ?

海苔の生育にはいくつかの条件が必要です。寒すぎても暑すぎても生育は悪くなります。海苔は自然素材なので旬があり、養殖地域によってやや異なりますが、海水温が下がり始める10月から翌年3月頃にかけて、海苔が最も成長する時期になるのです。

通常、漁師は11月下旬から海苔の収穫を始めます。12月上旬までに収穫された海苔を「初摘み」または「一番摘み」と呼び、そのような海苔は柔らかな食感と甘い香りが特徴です。そして、収穫の回数が積み重なっていくのとともに、海苔の成長は4月頃まで続きます。 収穫回数を重ねると海苔の食感は硬くなっていき、若い海苔ほどの味と風味は得られません。そのため、最高の海苔を味わいたい場合は、12月頃に海苔を購入するのがよいでしょう。

美味しい海苔の特徴とは

伊藤さんにとって上質な海苔とは、「黒く艶があり」「強い旨み」「口の中で溶けるような口どけ」の3点であると話してくれました。とはいえ、一般の方には黒々とした色艶の見分けはつきにくいでしょう。伊藤さんから2種類の海苔(上記の画像)を見せて比較してもらいました。右側の海苔の方が色濃く深みのあるので品質の良いものであり、左側の海苔は色が薄い緑色でやや品質が劣ります。

・黒々とした色と艶と光沢

まず 艶が感じられる、黒に近い濃厚な緑色の海苔を選びましょう。このタイプは、ほとんど11月から12月上旬の1回目、あるいは1月から2月の2回目に収穫されたものだからです。海苔にツヤがなく、薄黄緑色をしているものは、おそらく収穫期が終わりに近づいた時に穫れた海苔の可能性が高いです(価格は10本で約600円以上)。

・海苔の厚み

色は濃いですが、その厚みは光を通す程薄く、うっすらと裏側が見えるようにみえます。食感が軽く、味はパリッとしており、品質が良い海苔は高級品として本格的な日本料理店に好まれます。 一方、ぶ厚い海苔は、一般の飲食店で使われている傾向があるようです。

・比較的高い価格帯

海苔は、収穫時期によって等級や味わいが異なります。パッケージには「初摘み」「一番摘み」「新海苔」や生産年が表記されたラベル、そして「丸」「◯」といった文字や記号が付されています。

柔らかい海苔の芽は、乾燥後に縮み、海苔の表面に小さな穴ができる傾向があります。海苔業界では、これらの小さな穴を一般に「丸」または「◯」と呼んでいるのです。小さな穴のある海苔は、通常、より新鮮で、より美味しく、より高価であると見なされるのです。 例を挙げると、パッケージに「一番摘みの◯」と書かれた高品質な海苔は、通常10枚入りで価格が1,000円前後となります。

一方、パッケージに販売者や生産者名が明記されている海苔であっても、必ずしも質の良い海苔とは限りません。したがって、やはり海苔を実際に味見して、好みの味と信頼できるメーカーをメモしておくと、今後の購入時に参考になると思います。

梱包材の選びも重要

一般的に市販されている海苔製品は、プラスチックで包装されていますが、プラスチック素材は光を透過しやすく、温度や湿度の影響を受けやすい海苔にはあまり向いていません。そのため、「伊藤海苔店」では湿気から海苔を守るために乾燥剤入りのアルミパッケージを採用しています。

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海苔の美味しい食べ方

以上の点から、良質な海苔の見分け方についてある程度ご理解いただけたのではないでしょうか。つづいて、海苔の美味しい食べ方はと言うと、海苔の魅力を伝えることに力を注ぐ伊藤さんに聞いたところ、「品質が良い海苔はそのまま食べるのが一番!」とのことです。

ごま油や塩で味付けされることが多い韓国海苔とは異なり、日本の海苔(特に関東地方)は味付けされていないものが多く、素朴ながらも旨味たっぷりの海の味を堪能できます。ご飯や麺、サラダなど、どんな料理にもよく合うことでしょう。

 

ちなみに、海苔には裏表があることが知っていますか?よく見ると、海苔には「表面」と呼ばれるツルツルな面と、「裏面」と呼ばれるザラザラな面があります。ご飯と一緒に食べる場合は、ザラザラな「裏面」を上に向け、ツルツルな「表面」を下にして置き、ご飯を包んで食べるのがお勧めです。ツルツルな「表面」を外側にすれば、見た目がきれいに出来上がるようになるからです。

開封した海苔の保存方法は?

海苔は湿気や光などに大変弱い食品です。一度開封した後、適切な保存の仕方をしないと、湿気って食感が損なわれ、形が崩れたりすることもあります。そのため、開封した海苔はなるべく早く食べ切ることが大切です。もし食べきれなかった場合は、高温多湿や直射日光を避けて、乾燥剤と一緒にホイルパックに入れるのがよいと、伊藤さんがおっしゃっていました。なお、海苔は冷蔵・冷凍する必要はなく、常温で保存して問題ありません。湿気対策をしっかりすれば、海苔のパリッとした食感は、だいたい3〜5ヶ月間程度持続させることができます。

もし海苔が湿気ってしまった場合は、その海苔で海苔佃煮を作ってみてはいかがでしょうか。鍋に海苔、水、醤油、砂糖、酒を加えて沸騰させれば、ご飯にぴったりの日本の伝統食品である甘じょっぱい海苔佃煮が出来上がります。

島国日本の海の幸を味わおう

古来より日本の食文化で重要な役割を果たしてきた海苔は、日本人が大好きな「旨味成分」を豊富に含む健康的な食材です。独特なパリッとした食感と香ばしい香りを堪能できる海苔は、軽いので、観光のお土産や贈り物にもピッタリでしょう。機会があれば、この記事の選び方を参考にして、海からの贈り物である海苔を周りの人と一緒に楽しんでみてください!

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ライター紹介

Fuchi
Fuchi Pan
台湾出身、東京在住。手仕事の器や好きなものに囲まれる暮らしに憧れています。
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