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ドラマ『孤独のグルメ』の聖地を巡る中央線の旅 —ハワイアンオックステールスープ、焼き鳥、モロッコタジン

東京駅と八王子市高尾駅を結ぶJR中央線(快速)沿いの駅の周りには、たくさんの美味しいレストランがあります。中には台湾をはじめ、海外でも人気を博したドラマ『孤独のグルメ』に出てくるお店も点在しています。俳優の松重豊さん演じる井之頭五郎が実に美味しそうに食べる場面を見て、ドラマにハマった人も多くいるでしょう。今回はtsunagu Japan特集企画記事「Area of Japan」として、中央線の阿佐ヶ谷駅・西荻窪駅エリアの『孤独のグルメ』登場店を巡り、おすすめメニューを食べてきました。

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『孤独のグルメ』に登場する中央線沿いのレストラン

Season4【第8話】 阿佐ヶ谷・本格オックステールスープが味わえるハワイ料理店「YO-HO's cafe Lanai」

東京都杉並区の阿佐ヶ谷は昔から人気の住宅地であり、阿佐ヶ谷駅近辺にはいつも多くの人で賑わっています。駅の東口には大型商店街、阿佐ヶ谷パールセンター商店街があり、様々なお店が軒を並べ、ローカル色が強いエリアです。ドラマ『孤独のグルメ』シーズン4の8話では、主人公の井之頭五郎はこの阿佐ヶ谷駅を訪れました。その日は暑かったことからハワイを連想し、路地裏にあるハワイアンレストラン「YO-HO's cafe Lanai」へ行くことになったのです。

駅の東口から、細い商店街に沿って歩くこと約5分。「YO-HO's cafe Lanai」は、2013年にオープンした、元気で明るいオーナーの堀川さんとその奥様が経営するハワイアンレストランです。入口に目立った看板はなく、無造作に置かれた植木が、まるで友達の家に遊びに来たかのような、リラックスした雰囲気を醸し出しています。

お店の中は、こじんまりとした空間に3〜5卓ほどのテーブルが並べられていて、色鮮やかなリースやウクレレなど、ハワイらしい置物が飾られています。壁の片隅には『孤独のグルメ』出演時に関する情報も飾られていました。おすすめメニューとしてハワイオックステールスープ、前菜のガーリック枝豆、モチコチキンなど、主人公五郎がドラマの中で食べたメニューが紹介されており、私たちもそれらを注文をしてみました。取材時、人気メニューであるアサイーボウルは提供しておりませんでしたが、それでも他の料理への期待で私たちの胸は高鳴りました。

料理が提供されるたび、オーナーの奥様がテーブルの横に立ち、親切に食べ方などを説明してくれました。まず最初に提供されたのが、前菜のガーリック枝豆です。普段日本でよく見るさっぱりした塩味の枝豆とは違い、こちらの枝豆はジューシーなタレに大量の刻みニンニクが加えられています。ニンニクの香りが非常に強く、少し胡椒の風味もしました。程よい塩加減とピリッとした辛味が後を引く逸品です。

続いて出てきたのは「モチコチキン」。名前の「モチコ」は漢字で書くと「餅粉」で、いわゆる白玉粉を指します。一般的な唐揚げとの一番大きな違いは、モチコチキンの衣には白玉粉が使われていることです。ハワイでは通常、チキンはサラダ油を使って揚げられますが、YO-HO's cafe Lanaiではエアフライヤーを使っているため、一層パリッとした食感が楽しめます。衣に白玉粉を使ったモチコチキンは外側がパリッと香ばしく、中の鶏肉も程よい塩気と甘味が感じられ、しっとりと柔らかく、とても美味しかったです。

そしていよいよ今回のメイン「オックステールスープ」の登場です。パクチーとネギがたっぷり浮かんだスープに、ゲンコツとたっぷりの香味野菜・しいたけ・昆布・オレンジピール・スパイスと共に6時間以上煮込んだ国産テールが入っており、ハワイソルトで味が仕上げられています。オーナーさんの指示に従って、まずスープを一口飲み、オックステールの出汁を味わいます。

続いて、小さなお皿に刻みショウガをたっぷり入れ、醤油を注ぎ、オックステールをショウガ醤油につけて食べてみました。オックステールは拳ほどの大きさがありますが、お箸でするっとほぐれるほど柔らかく煮込まれています。牛骨の周りにはゼラチンやコラーゲンが豊富に含まれているため、美容に良いかもと期待しながら、夢中になって頬張りました。オックステールはご飯と一緒に食べても良いですし、スープが半分ほどなくなったあたりで、ご飯とショウガ醤油を一緒にスープに入れ、おじやのようにして食べても美味しいです。元々はさっぱりとしたスープが、たちまちコクのある、香り豊かな味わいになり、思い出に残るような一品となりました。

最後に私たちはアイスクリームで、このハワイアンなランチを締めました。ソースのかかったバニラとチョコのアイスクリームに、新鮮なバナナスライスが添えられ、一瞬にして暑さを忘れ、涼やかな気持ちになれました。

Season 5【第3話】 西荻窪・地元の人に愛される焼き鳥屋「やきとり 戎 西荻南口店」

東京都杉並区の面積の多くを占めている荻窪は、かつては多くの作家や芸術家、音楽家などの文化人が集まる場所でもありました。JR中央線の荻窪駅と吉祥寺駅の間には「西荻窪駅」という駅があります。この西荻窪駅を起点に、北の善福寺川と南の五日市道路までのエリアは、地元の人から「西荻(にしおぎ)」と呼ばれ、今でもアンティークショップやカフェ・書店・居酒屋など、ユニークなお店が多く立ち並んでいます。

ドラマ『孤独のグルメ』シーズン5の第3話では、井之頭五郎はある先輩に呼ばれ、西荻窪を訪れました。飲み屋で立ち並ぶ路地を歩いていると、その先輩が居酒屋で昼間から一人飲みしているところに出くわします。五郎が実際にお店に入って食事をしたわけではありませんが、ドラマの中でこのお店が登場していたので、今回私たちの訪問先の1つとして選んでみました。

西荻窪の飲み屋街に来ると、人と人の距離がとても近い雰囲気で、町は和気あいあいとしています。道行く人々がお互いに挨拶し合っているのもよく見られました。このエリアには地元に根付いた居酒屋が多くあり、中でも1973年の創業から50年ほどの間愛されている「戎」は、低価格で良質な焼き鳥・串焼きを提供することで有名です。戎は荻窪駅南口に本店があり、北口に分店があります。今回、私たちは『孤独のグルメ』にも登場した、南口から徒歩約1分の距離にある「やきとり 戎 西荻南口店」本店を訪れました。

「戎」では国産食材を使用するのはもちろん、新鮮な食材を使うことにこだわっています。焼き鳥は備長炭を使用して焼き上げるなど、食材から調理方法に至るまで細部まで気を抜きません。こうして誕生した美味しい料理だからこそ、地元の人の心を掴んで離さないのです。定番の焼き鳥メニュー以外にも、様々な居酒屋メニューを楽しむことができます。私たちが訪れたのは平日の昼間でしたが、店内は多くのお客さんで賑わい、1人で食事にきたおじさんや友達と複数で集まっている若者もいました。

私たちはまず「おまかせ5本盛り(塩)」を頼みました。内容は豚のタン(舌)、ハツ(心臓)、ハラミねぎま、とり皮ピーマン、鶏つくね、つる(のど肉)でした。程よい塩加減で味付けされていて、食材の新鮮な旨味が際立っていました。中でもつるはジューシーでありながらぷりっと適度な弾力もあり、あまり他では見たことのないメニューでもあったためか、特に印象深く残っています。他にも、タレのとり正肉(もも)、とり皮、れば、うずら玉子を頼みましたが、どれも絶妙な甘辛さのタレが食材とよく合って非常に美味しかったです。

焼き鳥の他にも、私たちはサラダとして味噌だれキャベツ、おつまみとしてイワシコロッケや唐揚げ、牛もつ煮込み豆腐を頼みました。中でもイワシコロッケは「戎」の名物メニューであります。イワシをまるまる1匹コロッケの餡で包み、黄金色になるまでカラッと揚げ、最後に上からタルタルソースをかけた料理です。初めてイワシとコロッケという組み合わせを見たので、とても斬新に感じましたが、見栄えがユニークなだけでなく、肉厚で新鮮なイワシがつぶされたじゃがいもの食感とよく合い、一口食べただけで人気を集める理由がすぐにわかりました。

Season 5【第3話】西荻窪・本格北アフリカ料理のモロッコレストラン「tam tamu」

『孤独のグルメ』の聖地巡りの旅もついに最終目的地を迎え、私たちは西荻窪南口にあるモロッコレストラン「tam tamu」を訪れました。ドラマのシーズン5の第3話で、主人公の五郎は先輩と会った後、お腹が減ったのでレストランを探すことに。居酒屋が立ち並ぶエリアから線路沿いの道を歩いていたら、入口に大きな赤い国旗がかかったお店が目に入ったので、そこに入ることにしたのです。ドラマで五郎が訪れたのは「tam tamu」が移転前にあった場所ですが、現在の「tam tamu」は新しい場所に移っており、私たちが訪れたのはこの移転先の新しい店舗でした。

店内は美しい内装から深いテクスチャの壁、天井からぶら下がったレースと、隅々まで異国情緒に溢れています。モロッコ料理の名前にはあまり馴染みはありませんが、とても綺麗な店員さんの紹介のもと、私たちは五郎が頼んだものと同じメニューを注文しました。

店内の片隅には『孤独のグルメ』の漫画原作者久住昌之さんと主人公・井之頭五郎を演じる松重豊さんの直筆サインが飾ってありました。モロッコ料理がどんな味をするのか、期待に胸が高鳴ります。

まず出されたのはミントティーでした。ホットとアイスから選ぶことができ、この日、私たちはホットを頼みました。銀色のモロッコポットと一緒に運ばれ、精巧な彫刻が施されたポットがまるで装飾品のように見えます。爽やかでほんのりとした甘さがあり、より一層私たちの食欲を引き立ててくれました。

モロッコの典型的な家庭料理であるハリラスープは、日本で言えば味噌汁のような存在でしょうか。モロッコではどの家庭も「おふくろの味」にあたる母親独自の味付けがあるといわれていますが、基本的にはトマト、野菜、鶏肉、スパイスそしてひよこ豆で作られ、上にパクチーが添えられています。少しとろみのあるスープは口の中でとろっと広がり、身体がよく温まりました。

モロッコにおける餃子のような料理である「ブリック」。中華や日本の餃子とは全く異なり、小麦粉でマッシュポテト、ひき肉、半熟卵を包みます。ナイフで真ん中を切ると、半熟卵の黄身がとろっと流れ出てきました。サクサクと香ばしい皮にレモンを少し絞ると、トロッとした卵の黄身と滑らかなマッシュポテトが口の中にふわっと広がりました。

続いて、自家製の焼き立てパンが、ひよこ豆で作られたフムスと共に出されました。ひよこ豆は食物繊維、タンパク質、ビタミンBなどの栄養素が豊富に含まれており、とても健康に良いと言われています。豆の香りがふわっと広がる滑らかなフムスは、柔らかくもちっとした食感のパンととてもよく合いました。

最後にメインの登場です。北アフリカモロッコ料理といえば、タジンを外すことはできないでしょう。タジンは鍋の特殊な形状により、調理の過程で食材の旨味が抜けてしまうのを防ぎ、食材本来の風味が楽しめます。今回私たちが頼んだのはグリーンピースと牛肉のタジンでしたが、大きな牛の塊肉とじっくり煮込まれ、味がしみ込んだジャガイモ、ズッキーニ、そして人参が入っていました。牛肉の深い味わいと野菜の甘味がぎゅっと濃縮された一品でした。

また人気の看板メニュー、ラム肉のハンバーグはこのお店のオリジナルの一品です。大きな円形に成形されたハンバーグをタジン鍋で蒸し、ラム肉本来の甘さと肉の弾力が楽しめます。ソースにはクミンなどのスパイスを独自にブレンドしたものを使っており、とても美味しかったです。ラム肉を使った料理が好きな人にはイチオシの一品といえるでしょう。

もう1つ、モロッコ料理における定番の一品といえばクスクスです。クスクスはデュラム小麦粉と水で作られた小さな粒状のパスタ。新鮮なムール貝・イカ・エビなどの蒸した海鮮を、ナッツのような香りと甘みのあるクスクスの上に乗せ、お皿の端のハリッサソースをお好みでつけて食べると、甘味の中にほんのりとしたピリ辛さが感じられます。上質な食材を引き立たせる程度のスパイスで丁寧に味付けることで、極上の味を楽しむ。それこそがモロッコ料理の真髄なのだろうという印象を受けました。

《孤独のグルメ》中央線のお店の聖地巡り

今回私たちは『孤独のグルメ』主人公の井之頭五郎の足跡をたどり、中央線の阿佐ヶ谷駅・西荻窪駅近くのレストランを巡りました。オックステールで地元民の胃袋をがっちり掴んだハワイ料理店、新鮮な食材を使った焼き鳥・焼きとんで人気を集める焼き鳥屋、日本では珍しい食材をスパイスやソースで最高の味に仕上げるモロッコ料理店と、非常に充実した旅でした。ただ、このエリアにはまだまだ訪ねるべきお店があるなとも感じました。この記事が皆さんにとって、中央線のことを少しでも知れるきっかけとなれば幸いです。もし東京に行く機会があれば、ぜひ中央線に乗ってお気に入りのお店を訪ねてみてくださいね!

この記事に掲載されている情報は、公開時点のものです。

ライター紹介

Fuchi
Fuchi Pan
台湾出身、東京在住。手仕事の器や好きなものに囲まれる暮らしに憧れています。
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