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郡上おどり - 夏に開催される日本最長の盆おどり

日本三大盆踊りのひとつである「郡上おどり」は、7月中旬から9月上旬にかけて、岐阜県の郡上八幡の町中を三十数日間かけて開催されます。400年以上の歴史を持つこの祭りは、古くから人々を魅了し、その楽しさと親しみやすさから、誰もが参加できる祭りとされています。2022年、3年間のパンデミックから復活した郡上おどりがどのような姿になったのか、実際に現地を訪れて取材をしました!

日本の夏の風物詩!「盆踊り」とは?

日本の夏の風物詩といえば、盆踊り。徳島の阿波おどり、秋田の西馬音内踊り、岐阜の郡上おどりが日本三大盆踊りといわれ、そのほかにも盆踊りは全国各地で開催されています。盆踊りは、8月中旬(一部地域では7月中旬)の「お盆」期間の行事のひとつで、お盆にお迎えした先祖や亡くなった親族の霊をもてなし、共に過ごして送り出すために行われます。

盆踊りは日本の各地域ごとに独自の伝統があるため、正確に理解するためには複数の盆踊りを知る必要があります。観客も参加できるものから、プロの踊り手が厳しい練習を積んで披露するものまで、さまざまなものがあります。

郡上おどりとは?

日本を代表する盆踊りの一つですが、郡上おどりの起源は定かではありません。その痕跡は今から400年以上前、江戸時代初め頃に見られます。郡上八幡城主の遠藤慶隆が、身分社会の融和を図るため、領内の踊り行事をまとめて城下のお盆の祭りとして奨励したことが始まりとされています。その後、巡行者や旅芸人によって他の舞踊の影響を受けながら発展し、現在に至っています。

1922年には郡上おどり保存会が設立され、より正式な組織として現在の形となりました。30夜以上にもわたる開催期間は、日本最長の盆踊りの祭典です。郡上おどりは1996年に国の重要無形民俗文化財に登録され、現在も郡上八幡を代表する存在となっています。

郡上おどりはいつ開催される?

郡上おどりは、7月中旬から9月最初の週末にかけて30夜以上にわたって開催されます。平日と日曜日は20時頃から22時30分(土曜日は23時)まで、8月13日、14日、15日、16日は早朝まで、大規模な踊りが繰り広げられます。開催日時は、事前に公式カレンダーで確認することができます。

※2022年は開催が短縮されます。

郡上おどりはどこで開催される?

郡上おどりは、郡上八幡旧庁舎記念館(上の写真)から本町、新町などの中心街まで、郡上八幡の至る所で行われます。日程によってどの会場で開催されるのか異なるので、事前に公式サイトで確認してから訪れるのがよいでしょう。公式サイトには、日本語や英語で地図付きのスケジュールが掲載されています。

3年ぶりに復活!2022年の郡上おどりを確認

パンデミックにより3年間中断していた郡上おどりが、2022年、ついに復活します。この意欲的な再出発に注目して、2022年の郡上おどりがどのように実現されるのか、tsunagu Japan編集部が岐阜の山奥に潜入してみました。

パンデミック時代の郡上おどり

もちろん、パンデミックはまだ終わっていません。2022年の郡上おどりは、安全で楽しいものにするために、数々のCOVID-19対策が施されています。祭りの開催日は主に週末とお盆期間の合計17日に減り、終了時刻は前倒しされ、徹夜踊りの終了時刻は午前1時になりました。そのほか、体温チェック、マスク着用、アルコール消毒、ソーシャルディスタンスの確保など、さまざまな規制が行われています。

しかし、それでもこのイベントの特徴である陽気な雰囲気は健在で、マスクをしていても地元の人たちの笑顔は隠せません。この祭りはかつて、明治政府が日本の近代化にそぐわないと判断した1874年と第二次世界大戦中の2回だけ禁止されましたが、古来の伝統が再び大きな試練を乗り越えたことは明らかです。

実際に体験!「郡上おどり」の見どころとは

今回の取材のために郡上八幡を訪れたのは、2022年の郡上おどりの初日、7月9日(土)でした。浴衣姿の踊り手や見物客でにぎわう夜の街並みに、提灯の暖かい光がほのかに灯る。今夜のイベント「おどり発祥祭」は、1936年に建てられ、現在は観光案内所として町の中心部にある西洋風の立派な郡上八幡旧庁舎記念館で行われました。

雨天にもかかわらず、会場は期待に満ちた空気に包まれ、日が暮れるにつれて人だかりができました。隣接する吉田川の激しい轟音をBGMに、三味線、太鼓、笛の美しい音色が響き渡り、お囃子のウォーミングアップが始まりました。まばゆい屋形の上には、ライトアップされた郡上八幡城が見え、町の伝統の象徴として住民を見守っています。

まだ歩けないような小さな子どもから、元気な若者、大人まで、幅広い年齢層の人たちが集まっていました。ドレスコードは意外と緩やかで、華やかな浴衣や、カジュアルなTシャツと短パンに身を包んだ多様な人たちでバランスが取れていました。浴衣のレンタルや着付けをしてくれるお店もありましたが、私たちは、この日に購入した下駄を履き、手ぬぐいを首にかけて、シンプルなスタイルで出かけました。浴衣、下駄、手ぬぐいは郡上おどりの3大アイテムであり、熱心なファンは、それぞれ最高のものを手に入れるためにわざわざ専門店へ足を運ぶそうです。

私たちは、内輪の人たちだけが参加するのだろうと思い、もっと近くで見ようと、観客の前方へと移動しました。ところが、音楽が始まると同時に、群衆が一斉に踊り出し、私たちはその中にすっかり飲み込まれてしまいました!驚き圧倒された私たちは、できるだけ後方に下がり、遠くから観察してから勇気を出して再入場しました。曲が進むにつれて踊り手たちは列に分かれて、記念館から新町通りをゆっくりと進んでいきます。そして、終点まで行くと、また記念館前に戻ってくるという流れを、何度も何度も繰り返しながら踊っていました。

郡上おどりは、道路や広場、屋形の周りなどを行列が回る伝統的な踊りです。地元の神事から生まれたもので、音楽、テンポ、動きなどがそれぞれ異なる10種類の踊りで構成されています。この種類の多さが郡上おどりの特徴なのですが、どの踊りも単純な動作の繰り返しが多いので、地元の人を見習いながら簡単に参加することができますよ。

私が今までに行った他地域の盆踊りは、観客が多く踊り手は少数でした。しかし郡上おどりは、踊らずに見ているだけの人はほとんどいません。私たちは傍観者としては場違いな気がして、ほんの数分見ただけですが自信を持ってやってみようと思い立ちました。文化や言葉の壁があるにもかかわらず、私たちは歓迎され、このような大きなグループとシンクロする異世界のような感覚に引き込まれ、緩やかな軌跡を描くように踊りました。1時間後、私たちはその時間を満喫し、地元の人たちが誇らしげにその伝統を続ける中、夜の帰路につきました。

踊るだけじゃない!郡上八幡をさらに楽しむ方法

郡上おどりが注目されていますが、それは郡上八幡の魅力のひとつに過ぎません。祭りの前後には、ノスタルジックで素朴な町並みを散策する時間がたっぷりありました。古風な町家が、おしゃれなカフェやゲストハウス、バーとして生まれ変わり、その先には迷路のような路地や水路が町の中心部へと誘うように広がっています。その周囲には力強い川が流れ、そこかしこに鮎を獲る釣り人がおり、至福の自然の中で新鮮な空気を吸うことができます。美味しい料理はもちろん、以下のスポットもおすすめです。

郡上八幡の宿泊施設

郡上八幡の宿泊施設は、趣のあるゲストハウスから、快適な設備が整ったグランドホテルまで、数多くあります。ただし、郡上おどりの人気の高さから、真夏には満室になることが多いので、早めに予約しておくことをおすすめします。

地元の食材をふんだんに使った料理、長良川を望む豪華な露天風呂、ゆったりとした畳の部屋などを備えた大型ホテル「ホテル郡上八幡」は、人気の宿のひとつ。郡上おどりの日程と合わない人のために、ホテル郡上八幡では祭り期間中、町での踊りが開催していない日程に日にち限定で、生のお囃子による小規模な「郡上おどり」を開催しています。ホテルでの「郡上おどり」で郡上八幡の夏を体験してみましょう。
 
ホテル郡上八幡は、郡上八幡旧庁舎記念館から車で10分ほどのところにありますが、郡上おどり会場への移動は、ホテルの送迎バスがご利用できますので便利です。

郡上木履:自分だけのオリジナル下駄を手に入れよう

郡上の人たちに溶け込むためには、伝統的な木製のサンダル「下駄」を履くのがいちばん早いでしょう。下駄は日本の夏祭りに参加するための必需品であり、郡上おどりの3大アイテムのうちの1つでもあります。

郡上八幡旧庁舎記念館から歩いてすぐのところにある「郡上木履」では、地元産のひのき材を使った下駄を作っており、職人がその場で花緒を付けてくれます。

長時間の激しい踊りに耐えられるよう、こちらの下駄は一本の木から削り出され、非常に丈夫にできています。万が一破損した場合は、郡上木履に持ち込めばメンテナンスや調整をしてもらえるので、末永く愛用することができますよ。

ひのき材は強度が特徴なだけではなく、舗装された道路や石畳の上で「カタカタ」と軽快な音を奏でることから、日本の夏の象徴とされています。また、シルクスクリーン印刷や地元作家の刺繍などの技法で彩られた花緒は、人目を引く華やかさを放っています。

私は、周りの川からインスピレーションを受け、落ち着いたブルーの花緒を選びました。試着してサイズを確認すると、職人さんが手際よく花緒を付けてくれました。カランコロンとリズミカルな音を立て、木の香りが漂い、あっという間に履きこなせるようになりました。簡単に履いたり脱いだりできるのは、土足厳禁の場所が多い日本ではとても助かります。

Takara Gallery Workroom: 世界にひとつだけの手ぬぐいをデザインしよう

郡上おどりの必須アイテムの一つである「手ぬぐい」は、日本の伝統的なタオルとして日常使いをしますが、郡上おどりでは浴衣の襟に沿わせて身につけ、襟元を彩ると同時に汗を拭いたり、雨を防いだりと実用的な役割も果たします。郡上木履から歩いてすぐの場所にある「タカラギャラリーワークルーム」では、シルクスクリーン印刷を体験することができます。日本では郡上市が産業の発祥地であるシルクスクリーン印刷は、地元に深く根ざし、現在でも技術は高く評価されています。

実際にシルクスクリーン印刷で手ぬぐいを作る体験に参加し、こちらの郡上八幡の街並みが再現されている柄を選びました。選べる絵柄は30種類以上あり、配置も自身で考えることができるので、背景には山、手前には街並み、その間に鯉が泳ぐ川をデザインしました。簡単な作業でありながら、自分の作品に命が吹き込まれたような満足感を味わうことができました。シルクスクリーン印刷は誰でも気軽にできるので、絵心に自信がない人でも安心です。自分で作った手ぬぐいを身につけて郡上おどりに参加すれば、きっと誇らしい気持ちになれるはずです。

1ヶ月前から電話予約(日本語のみ)できるので、ぜひご利用ください。英語対応可能なスタッフがいますので、日本語に自信のない方は英語メールでのお問い合わせも可能です。手ぬぐいプリント体験の場合の料金は、1柄1,000円が基本で、1柄増えるごとにプラス500円となります。

郡上八幡博覧館:郡上八幡のすべてが集まった場所

郡上八幡の歴史、文化、産業についてもっと知りたい方には、「郡上八幡博覧館」がおすすめです。館内には日本語のみですが看板があり、魅力的な展示やジオラマがたくさんあり、言葉の壁を超えてこの地を深く理解することができます。 

郡上地域の豊かな川や湧き水、町の歴史、美術工芸品、そして郡上おどりと、各セクションはテーマごとに分かれています。また、週末の11時〜15時台には毎回15分間の郡上おどりの実演紹介が開催されます。(詳細は下記参照) 

絹を草の根や樹皮で染めて独特の色を出す「郡上紬(つむぎ)」の伝統も郡上地域の魅力の一つです。伝統的な織機や著名な染織家による作品なども展示されており、浴衣選びのインスピレーションになりそうです。

また、日本では飲食店のメニューの模型としてよく使われている食品サンプルは、衝撃的なほどリアルに再現されています。食品サンプルの生みの親は郡上市出身で、現在では全国で生産されている食品サンプルの約50%を占めています。

郡上八幡の伝統に酔いしれよう

のどかな郡上八幡の町に、3年ぶりに待望の「郡上おどり」が帰ってきました。祭りの華やかさとともに、古くから伝わる伝統工芸品や文化も魅力です。下駄やシルクスクリーン印刷、郡上おどりへの参加など、郡上八幡は、地域とさまざまな交流ができる旅を求める人にとって理想的な旅先といえるでしょう。

この記事に掲載されている情報は、公開時点のものです。

ライター紹介

Steve
Steve Csorgo
オーストラリアのメルボルンで生まれ育ち、現在は新潟市在住。趣味は、地酒を見つけること、読書、そしてできるだけ多くの日本国内を旅すること。日本の好きなものは、温泉、史跡、手つかずの自然。伝統工芸品、風変わりだが魅力的な町、興味深い地元の話などを書くのが好き。
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